一大決心 その2
始める前に、何故あたしがNYに来たかという事をここで綴ってみたいと思う。
興味の無い人ごめんなさいw 2000年にPeakという山登りマンガを描いて以降、どうにも脱出できようも無いスランプに陥った。 プライベートでも散々な日々で、恐らく人生で一番どん底の時期ではなかったか。 それでも一旦は力を振り絞って、新しい作品のネームに着手した。 担当編集者からは比較的好評だったのだが、編集会議で落ちた。 こっちはそこそこやる気だったのだが、これで一気に無気力に拍車がかかった。 何も思い浮かばない。 このままじゃダメだ、何かを変えなくては・・・ でも自分の力だけでやるには限界がある。 そう思い、とりあえず環境をがらりと変えてみる事にした。 まず、場所を変えよう、引っ越し、いやそれじゃあまり変わらない、いっその事海外にでも行ってみようか。でも旅行じゃ物足りない。 3ヶ月くらい留学してみるか・・・ それを、当時行きつけのバーの店長に話したら、 「お前、アメリカ行け」 彼は過去、ロスに2年滞在していた経験の持ち主。 10代の頃に事故で片足を失って、以来相当苦労したらしいのだが、ロスに行って考え方が変わったと言う。 とにかく、アメリカの広さを見てこい、と。 ああ、アメリカか・・・いいな、それ。 それを親に話してみた。 反対するかと思いきや、 「是非行ってこい!」 で、大学時代に一回行った事のあるNYに行ってみようと。 また行きたい街でもあったが、卒業してからすぐに連載が決まったりで、なかなかその機会が無かった。今しかない、と。 それで今、もうすぐ3年になろうとしている・・・ よっぽど相性がいいのか・・・アレルギーも出ないし(笑) とりあえず、以下は前回からの続き。 * 例の出版社の社長さんとの交渉。
とにかく、商売のためにはマンガだけ作っていたのでは売り上げにならないというのが彼の考え方。それはあたしも同意だった。 特にまだまだマーケットの小さいアメリカ、オリジナルマンガが出回るにはそれ相応のオプションがいる。 だから、最終的にゲームや映画になり得る物を作る必要があると。 保証は無いんだけどさ。で、映画の会社に出せるようなプロポーザル、端的に文章にしろと。 これが結構難しい。 基本、漫画家はある程度アイディアが固まったらネームと言う、ラフな下書きと台詞を簡単にコマ割りにしていく。 言葉で表すよりもそっちの方が手っ取り早い。 なので、あたしはとにかくネームを描きたかった。それがあたしに一番向いてるやり方だからだ。文章にしても、ネームにする段階で大幅に話が変わる事もあるからだ。 ところが、なかなかそれにGOサインが出ない。 ここら辺で、制作行程における大きな壁がまず立ちはだかった。 向こうの言い分では「日本の漫画はすばらしいが、基本コンセプトがややこしいためにハリウッドから敬遠されている物もある、それは非常にもったいない」 なるほど、言いたい事はよくわかる。 なので、相手の要望もふまえ、ストーリーの作り直し等もした。 その辺の労力は特に厭う気もしない。 だが、前にも書いたと思うが、その際に問題になったのはアイディアの帰属権、そして、翻訳の件だ。 彼とは英語でやり取りをしていたが、とにかくあたしの英語もネイティブにはほど遠い。台詞をどうするかという問題になった。 ダイアログは特に難しいので、まずあたしが日本語でやるべきだと。その後で、翻訳した方がいいだろうという話になった。 基本的に、ネイティブじゃない日本人がアメリカ人がみて不自然でないように訳するのは相当厳しいらしい。 一般的には、ネイティブで、日本語がわかる人が訳するケースが多い。 Verticalで出版されてる「ブッタ」の訳者もアメリカ人で、日本語が 話せる人だった。 そのときに上がったのがまた権利の問題だ。 「翻訳するにあたっては、それなりにお金がかかる。100%君がコピーライトを有するのもどうなのか」 「日本から権利を買って、翻訳するよりもお金がかかる。何しろ、本を出版するのに一万ドル以上は(正確な数字は忘れたが)かかるわけだから」 大体一冊の本を翻訳するのに1000ドル以上はかかるらしい。 ちなみに、その会社では契約した作家とは前金として8000ドル払うとの事。 内訳として、原作者が2000ドル、アーティストが6000ドル。全部一人でやれば8000ドルもらえるが、そこから翻訳にかかる費用を引く事になる。 まあ非常にクリアーだ。 今まで話した会社の中では一番わかりやすいし、日本の会社と比べれば条件は決していいとは言えないが、それでも良心的だと思う。 なので、一旦その条件を受け入れた。 だが、それはビザをサポートする条件でだ。 何しろ前金として8000ドルしか手元に入ってこないわけで、こっちは必然的に他の仕事をしなければ生活していけない。 こっちのコミックアーティストはほとんどみんなそうだ。 うまく行けば図書館でのボランティアでお金ももらえるはずだった。 だが、ビザの問題で一向に腰を上げようとしない相手に、こっちもいらだった。 何しろ、こちらはあくまで外国人で、立場が弱いし、どうしても足下を見られる。 *今回色々交渉してみて思ったんだけど、日本人漫画家がこっちの原作とやるのはまだちょっと難しいかもですね。アマチュアならともかく、プロではなかなか金にならないし。 一番現実的なのは、アメリカの原作者と日本の漫画家を日本の出版社と編集部がバックアップする事かもしれません。 結局、そんなこんなでグルグルと、いわゆるDevelopment hell 、つまりドつぼの状態に陥った。 そう言う事が続いて、ようやく悟った。 恐らくこっちの会社と一緒に仕事をする前に、まず自分のアーティストとしての地位を確立しないとダメだと。 そうじゃなければ相手も安心してビザのサポートまで踏み込めないだろう。 何しろ例外の条件を相手に飲み込ませようとしていたわけだから。 一応、過去の自分の作品は印刷物にはなっているが、アメリカでは出版されていない。 なので、自費出版ならぬ、自分でインターネットで配信した方がリスクは軽い。 ここで何かを残しておけば、将来なんかに発展する可能性も無くはないと思うし。 結論として、具体的に漫画家としてこっちで仕事は出来なかったにせよ、個人的にはいい勉強になったと思います。 なかなか人には出来ない経験もした。 こっちの出版社にコネも出来たし、何よりこっちの子供達と直接ふれあえる機会もあった。 これは今後、あたしの人生に大きなプラスになっていくに違いないですから。 とにかく、今、無性に描きたい自分が居ます。 プロになってから、ここまでモチベーションが上がった事って過去に無かったかもしれません。これだけでも来た甲斐はあったと思うし。 日本に帰ってからも大変には違いありませんが、頑張っていこうと思います。 引き続き、このブログではこちらのマンガ事情、そして、減債進行形の作品の経過報告も出来る限りしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。 #81 一大決心 その2#82 一大決心 その2お茶妖精さん>
いつもコメントどうもです^^ 恐らく映画でしょうね。こっちではアニメも一応映画のうちという認識なんじゃないかと思います。 こっちではマンガの需要は一応あるんですよ。 特にハリウッド。何しろ、スクリーンライターが腐るほど居ますからね。映画にするにあたり、ストーリーボードというのを出すんですが、その代わりにマンガを使おうという動きもあるくらいなのでね。西海岸の出版社はそれを目論んでると思いますね。ハリウッドに近いというのもそのせいでしょう。 こっちは、コミックでもなんでも、映画にならないと金にならないんでしょうね。 #83 大変な決断でしたね由佳さんお久しぶりです。
Blogは更新のたびにチェックさせてもらってます! 私の知っている由佳さんとはまるっきり違う、プロの漫画家の由佳さんが覗けるので、楽しみにしています。 夏ごろに帰国するという今回の決断、大変だったでしょうね。 NYを舞台にした英語のマンガ、楽しみにしています。 時間があるときに、ご飯食べましょう! #84 一大決心 その2ふむむ。
詳しいいきさつはこうだったのか。 外に出て初めて自分が見えることもあるですな。 お互い全くもって、いい経験してる最中ですな! 職人はやっぱ『創る欲望』強くてなんぼだよなぁ・・・と思う。 無性に描きたい!って気持ち凄く分かりますだ! 作品楽しみにしてるぜよ! #85 一大決心 その2おお、meerさん、ご無沙汰してます!
チェックしてくれていたようで、ありがとうございます^^ まあ、色々考えた末、こっちにこのままずるずる居てもただ時間を浪費するだけのような気がしたのでね。自分で何かアクションを起こさないと何も変わらないなと。それには、今の状態のがんじがらめのままでは何も出来ないなと思ったんですよ。ここはチャレンジの街ですから。 で、とりあえず時間を設定しようと。その方がケリがいいので。 マンガの方ななんとか今進行させています。色々苦戦してはいますが。 近いうち、是非食事行きましょう! しょう> 初コメントどうもw そそ、ちょっと話したかもしれないけど。とりあえず潮時の見極めも大事かと。ただしがみついていても何もならないからね。背水の陣で勝負しかけます。というわけで、これからもよろしく。 お互い頑張りましょ。 #87 管理人のみ閲覧できますこのコメントは管理人のみ閲覧できます
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「最終的にゲームや映画になり得る物を作る必要がある」というのが興味深いです。日本だと漫画→アニメ化(→グッズ)→ゲーム化、そして運が良ければ映画化という流れになる気がするんですが、やはりアニメ化という考えはあまりないんですね。ここでいう「映画」は実写のことですよね?それを意識して漫画を描く人は、日本にはいないだろうなあ・・・。